児童発達支援管理責任者という職種をご存知でしょうか?児童発達支援管理責任者は、障害を抱えている児童に対し、家庭や関係機関と連携をとって療育を推進する職員です。現場のリーダー的な存在であり、職員のマネジメントや個別支援計画の作成などを行います。
誰でも就任できる職種ではなく、定められた実務経験と研修修了の要件をクリアしなければなりません。本記事ではそれらの要件と活躍する場を解説するため、児童発達支援管理責任者に興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
児童発達支援管理責任者とは?
児童発達支援管理責任者とは、障害を抱えている児童に対し、家庭や関係機関と連携をとって療育を推進する職員のことです。現場の職員たちをまとめるリーダー的な存在であり、質の高いサービスを目指して職員への指導や助言を行います。
児童発達支援施設については、この児童発達支援管理責任者の配置が義務付けられています。児童発達支援管理責任者は責任を伴う業務が多く、一般職員に比べて難易度が高いため、ベテラン職員が資格を取得してその役割を担うケースが多いです。また、施設や事業所によっては、管理者と児童発達支援管理責任者を兼務しています。
児童発達支援の内容
そもそも児童発達支援は、どのような内容が行われているのでしょうか。厚生労働省が発表した「児童発達支援ガイドライン」では、以下のように定義づけされています。
日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練その他の便宜を提供するもの
また、児童発達支援の内容としては、以下3つの種類に分類されます。
支援の種類 | 内容 |
---|---|
発達支援 | 健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性に関する支援 |
家族支援 | 支援を通じて家族の負担を軽減し、快適な子育て環境を整える |
地域支援 | 教育機関や医療機関、自治体などの機関との関係性を構築するための支援 |
児童発達支援管理責任者の仕事内容
児童発達支援管理責任者の仕事内容は多岐にわたります。主な仕事内容としては、以下の3つが挙げられます。
個別支援計画の作成
児童発達支援管理責任者は、児童1人ひとりの特徴に基づいて個別支援計画を作成します。個別支援計画とは、児童や保護者のニーズを取り入れ、提供する支援の内容や方針を定めた計画書のことです。基本的な個別支援計画には、以下のような内容が含まれます。
- 支援の方針やコンセプト
- 希望の生活を実現するための到達目標
- 短期間で実現できる当面の目標
- 目標を達成するための具体的な支援内容
- 目標達成に向けた課題分析
- 他機関との連携
実際に行われる児童への支援や療育は、この個別支援計画に沿って実施されます。個別支援計画の内容が適切でないと良質なサービスを実現できないため、児童発達支援管理責任者の業務には責任が伴います。
アセスメント・モニタリング
アセスメントとモニタリングも児童発達支援管理責任者の重要な仕事です。障害を抱える児童とその保護者との面談を行い、それぞれのニーズを把握します。ニーズを明確にすることで、より質の高い個別支援計画を作成できます。
モニタリングは個別支援計画の実施状況を確認し、必要に応じて計画を都度変更します。最低でも6ヶ月に1回以上はモニタリングを実施する必要があり、児童発達支援管理責任者はその記録を正確に残すのが仕事です。
ご家族との面談対応
ご家族からの面談依頼があれば、児童発達支援管理責任者はその対応を行います。対象の児童により良いサービスを提供するためには、普段から保護者と信頼関係を築いておくことが大切です。
また、児童発達支援管理責任者は個別支援計画を作成し、現場職員との接点を持っているため、支援や療育を行う児童の特徴をより理解しています。そのため、保護者に対して専門的な視点を持ち、的確なアドバイスをすることも仕事の1つです。
現場職員への指導・助言
児童発達支援管理責任者は現場職員への指導や助言も行います。児童発達支援管理責任者が現場を把握し、適切な指示を与えることで、対象の児童に良質なサービスを提供できます。
また、事業所によっては児童発達支援管理責任者が現場に入って児童と関わることもあり、その際は個別支援計画書に基づいた支援を実施します。
児童発達支援管理責任者のなり方|実務経験・研修
児童発達支援管理責任者として現場で活躍するためには、「①実務経験の要件」と「②研修修了の要件」の2つを満たす必要があります。それぞれ複雑な要件であるため、1つずつ詳しく解説します。
①実務経験の要件
実務経験の要件として、3種類の条件いずれかを満たす必要があります。そして、実務経験年数のうち3年以上は、障害者福祉の分野での相談支援業務・直接支援業務の経験が求められます。
パターン1.相談支援業務を5年以上
1つ目のパターンは、相談支援業務を5年以上実施した場合です。相談支援業務とは、障害や環境上の理由で生活に支障をきたす方からの相談に対応し、アドバイスや支援を行う業務のことです。
相談支援業務の要件を満たすためには、以下いずれかの事業所での実務経験が必要です。
事業所の種類 | 具体的な事業所 |
---|---|
地域の相談支援事業 | 障害児相談支援事業、身体(知的)障害者相談支援事業、地域生活支援事業など |
相談機関 | 児童相談所、児童家庭支援センター、身体(知的)障害者更生相談所など |
入所・通所施設 | 障害児入所施設、乳児院、児童養護施設、児童心理治療施設など |
就労支援施設 | 障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど |
学校教育法で規定された学校(大学以外) | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校など |
なお、以下いずれかの条件を満たす場合は、保険・医療機関での従事期間も加算して経験年数を計算できます。
- 前途したいずれかの事業所で1年以上従事している場合
- 社会福祉主事任用資格を保有する場合
- 介護職員初任者研修を修了、もしくは訪問介護員2級以上を保有する場合
- 特定の国家資格などを保有する場合
パターン2.直接支援業務を5年(8年)以上
2つ目のパターンは、直接支援業務を5年以上従事した場合です。社会福祉主事任用資格者等でない方は、8年以上の従事期間が求められます。
直接支援業務は、何かしらの障害によって日常生活を快適に送れない方に対し、生活能力を向上させるための介護や援助、訓練などを行う業務です。従事期間に該当する事業所は下記の通りです。
事業所の種類 | 具体的な事業所 |
---|---|
入所・通所施設 | 障害児入所施設、助産施設、乳児院、母子生活支援施設など |
児童・障害・福祉に関する事業 | 障害児通所支援事業、児童自立生活援助事業、放課後児童健全育成事業など |
医療機関 | 保険医療機関、保険薬局、訪問看護事業所など |
障害者雇用事業所 | 特例子会社、重度障害者多数雇用事業所など |
学校教育法で規定された学校(大学以外) | 幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校など |
パターン3.有資格者は実務業務を5年以上+相談業務を3年以上
国家資格などの資格保有者の場合、その資格に関わる実務経験が5年以上必要です。それに加え、前途した事業所のうち介護関連の施設を除いた機関にて、相談支援業務もしくは直接支援業務の従事期間が3年以上求められます。
なお、国家資格などによる従事期間中にも、相談支援業務や直接支援業務の従事期間は加算されます。条件に該当する具体的な資格は以下の通りです。
医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、管理栄養士、栄養士、精神保健福祉士
実務経験に該当する範囲は都道府県によって独自の基準が決められていることもあり、一部例外も存在するため、有資格者で児童発達支援管理責任者を目指す場合は、必ず各都道府県のホームページをご確認ください。
研修修了の要件
実務経験の要件を満たした方は、「相談支援従事者初任者研修」の一部と「児童発達支援管理責任者研修」を受講する必要があります。「児童発達支援管理責任者研修」に関しては、基礎研修・実践研修・更新研修の3つに分かれています。
相談支援従事者研修
相談支援従事者研修は、障害を抱える児童の生活支援に必要な相談対応やサービス調整など、支援方法のスキル向上を図るための研修です。講義部分の「サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者向け研修」を受講します。
児童発達支援管理責任者研修
児童発達支援管理責任者研修は基礎研修・実践研修・更新研修の3種類に分かれており、そのうち更新研修は5年に1度の間隔で受講する研修です。それぞれの研修時間は以下の通りです。
研修の種類 | 研修時間 |
---|---|
基礎研修 | 15時間 |
実践研修 | 14.5時間 |
更新研修 | 13時間(令和5年までは約6時間に短縮可能) |
上記のように複数の研修を受ける必要があり、開催時期は都道府県によってさまざまなので、研修を受講する際はスケジュール調整を慎重に進めましょう。
児童発達支援管理責任者が働ける職場
児童発達支援管理責任者が活躍できる職場は複数あります。また、児童福祉法で定められている事業所の場合は、児童発達支援管理責任者を最低1人以上配置しなければなりません。
なお、児童発達支援管理責任者が働ける職場は、大きく分けて「通所系」と「入所系」に分類されます。それぞれの詳細は以下の一覧表をご確認ください。
施設形態 | 詳細 |
---|---|
障害児通所支援施設(通所系) | ・児童発達支援センター ・児童発達支援事業類型 ・医療型児童発達支援 ・放課後等デイサービス ・保育所等訪問支援 |
障害児入所支援施設(入所系) | ・知的障害児施設 ・第一種自閉症児施設 ・第二種自閉症児施設 ・盲児施設 ・ろうあ児施設 ・肢体不自由児施設 ・肢体不自由児療護施設 ・重症心身障害児施設 |
まとめ
本記事では、児童発達支援管理責任者の仕事内容、就任するための必須要件を解説しました。
児童発達支援管理責任者の仕事内容は、職員のマネジメントや個別支援計画の作成、ご家族との面談対応などさまざまです。現場で活躍するためには「実務経験の要件」と「研修修了の要件」を満たす必要があります。
児童発達支援管理責任者を目指す場合は、それらの重要事項を確認した上で、必要な実戦経験を着実に積んでいきましょう。
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