高齢になると多くの方が直面する、介護の問題。「ご両親に介護の必要性を感じるようになってきた」、「自分が将来的に介護が必要になったときに、ちゃんと選べるようにしたい」といった思いをお持ちの方もいるのではないでしょうか。介護施設には多くの種類があり、それぞれの役割や入居条件、運営団体によっては費用などにも違いがあります。
今回は、介護施設や老人ホームの種類や特徴、大まかな費用の違いや選ぶ時のポイントなどを解説します。ぜひ最後までご覧いただき、今後の参考になさってください。
介護施設と老人ホーム
よく、「介護施設」と「老人ホーム」の違いは何か?と言う疑問を持たれる方が多くいらっしゃいます。
一般的に、介護施設とは「介護を受けることができる施設全般」のことであり、「老人ホーム」は「特別養護老人ホーム」や「養護老人ホーム」、「有料老人ホーム」などの「老人ホーム」と言う名前がついている施設をはじめ、高齢者が生活でいる施設や住宅全般の総称です。
そのため、高齢者が利用できる老人ホームの中でも、介護が必要な方が利用できるもの(しやすいもの)が介護施設なのです。
介護保険制度について
介護施設や老人ホームを利用するにあたっては、介護保険制度についても理解しておくと良いでしょう。
介護保険制度は、介護が必要な高齢者を支えるための制度です。40歳になった月から保険料が徴収されるようになります。なお、介護保険の給付対象は原則として次の2つのケースがあります。
- 介護や支援が必要と認定された65歳以上の人
- 特定疾病によって要介護状態となった40際以上の人
介護サービスを利用する場合、自己負担額は全体の1割となりますが、収入等によっては2割(もしくは3割)負担になることもありますので、詳しいことは市区町村の窓口や「ケアマネージャー(通称ケアマネ)」などに確認するようにしておきましょう。
介護施設の種類と特徴
前述した通り、介護施設は主に「公的施設」と「民間施設」の二つに分けることができます。施設選びをするときには、ご本人とご家族の思いにあった施設を探すことが重要になります。そのため、施設それぞれの特徴や入居条件、受けられるサービスなどをある程度でも知っておきましょう。詳しい内容や施設の比較などは、ケアマネージャーさんや地域包括支援センターのスタッフさんから情報を得ることができますので、遠慮なく質問するようにしてください。
公的施設
公的施設は、国や地方自治体などの公的機関が運営しています。公的施設という性質上、介護度の高い方や低所得者を支援することをメインとしています。人気がある施設が多いことから、入居待ちになりがちと考えて良いでしょう。施設の種類と概要は次のとおりです。
特別養護老人ホーム(通称:特養)
特養は、基本的に要介護状態の人を対象とした施設です。寝たきりの人や認知症の人など、要介護度3以上の方が入居できること、受けられるサービスの幅が広いことが特徴です。また、一度入居できれば「最期」まで利用することができ、コストも低いことから「入居待ち」があるほど人気があります。ただし、「入居待ち」だとしても思いがけないタイミングで入居できたり、要介護者の状態によっては早めに利用できるケースもありますので、ご希望であればその意志は伝えるようにしましょう。
介護老人保健施設(通称:老健)
老健は、要介護状態の人を対象とした施設です。病院を退院した後に在宅での生活が困難な方が入所できる施設であり、主に医療的なケア(リハビリや医療的管理、身体介護)を受けることができます。
特養との違いは【入所期間が決まっている(原則:3〜6ヶ月)】ということであり、受けられるサービスにも違いがあります。また、ご本人の健康状態等によっては例外がありますので、次の入居先を探す、在宅でのケア方法を模索するなどの方法を考えておきましょう。必ずしも「6ヶ月経つと退去させられてしまう…」ということはないので、ご安心ください。
軽費老人ホーム
軽費老人ホームは、基本的な生活を自立的に行える方が対象です。家庭環境等によって在宅での生活が難しい場合に利用することが考えられます。他の老人ホームよりも比較的安価で入居できますが、利用条件として次のことが定められています。
- 夫婦で利用する場合にはどちらかが60歳以上
- 身の回りのことが自分でできること
- 月収34万円以下
ここでは夫婦で入居することも可能であるため、入居によって夫婦が離れて生活を送らなければならないケースは避けられます。また、軽費老人ホームでは入居後に介護が必要になった場合には在宅サービスを利用することになりますので、注意が必要です。
ケアハウス
ケアハウスは、軽費老人ホームの一種です。自立した人が対象であり、軽費老人ホームのような条件があります。また、所得制限はありませんが、入居金や家賃などが発生しますので、注意が必要です。さらに、介護サービスを受ける必要がある場合には介護認定を受け、「要介護1」以上である必要があります。
介護療養型施設
この施設は、在宅での生活が困難である要介護状態の人を対象としています。医師が複数人在籍していることから、医療的ケアが充実していることが特徴であり、入居する場合は医学的管理が必要とされることが条件です。受けられるサービスは、健康状態を回復させるためのケア(身体介護・医療介護・リハビリなど)を受けることができます。
民間施設
民間施設は、株式会社をはじめとした民間企業が運営しています。公的施設よりも費用がかかってしまいますが、その分サービスは充実しています。利用者のニーズを満たすことに重きを置いているため、レクリエーションやイベントも数多くあります。民間施設として一般的なものは、次のとおりです。
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームは、介護が必要な65歳以上の人が対象となる施設です。身体介護や生活支援、リハビリなど幅広いサービスを受けられるためとても人気のある施設であり、要介護状態ではない方も利用できる施設もありますので、ご本人やご家族のニーズをしっかり考えましょう。
なお、公的施設と比べると施設数が多く入居待ちの期間が短いので準備等を行いやすいというメリットがあります。
住宅型有料老人ホーム
この施設は、比較的介護度が低い人から自立している人まで幅広い人を対象とした施設です。自宅に住んでいるような感覚で入居することができ、受けられるサービスも充実していることが特徴的です。
なお、介護度が高い人は入れないことがあったり、必要なサービスによっては他のサービスを併用しなければならないこともあります。
サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)
サ高住は、介護度の低い人を対象とした住宅です。バリアフリー構造であることや、看護師や介護士が常駐していることもあることから、自立している人から要介護(要支援)の人までが利用できます。また、サ高住そのものが新しいところが多いため、設備が整っています。入居費用も安価であることが多いため、コストを抑えて入居したい方にはオススメです。
グループホーム
グループホームは、認知症を患っている方のための施設です。少人数の入居者が1ユニットを組んで、職員からのサポートを受けながら共同生活を送ります。利用のための条件は細かく決まっており、健康状態が悪化してしまうなどして医療的支援が必要になると退去しなければならないケースがありますので、ご本人の状況等を見ながら利用を検討しましょう。
健康型有料老人ホーム
この施設は、基本的に介護の必要がない健康な人が自立した生活を送るための施設です。要介護状態になったり認知症等が発症すると退去しなければならなくなります。施設によってさまざまなサービスがあり、健康を維持・増進しながら生活することができます。
ご自宅で一人で生活することが心配な人、高齢になってからも安心して活き活きと暮らせる施設として利用されます。
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介護施設利用のメリット・デメリット
介護施設を利用するにあたって、どんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。施設を利用する前には両方をしっかりと理解しておくことが重要です。
施設利用のメリット
家族の介護負担が減る
在宅介護をしていると、介護者の負担がどうしても増えます。さらに、家族全員が協力体制を整えられていれば良いですが、誰かに負担が集中してしまうとその人が体調を崩してしまうこともあります。
結果的に虐待をはじめとした悲しい事件が起こってしまうことも珍しくありませんので、早い段階で介護施設の利用を検討すると良いでしょう。
ご本人の健康と安全を守ることができる
介護施設では、職員や他の利用者さんの目があるので、何かしらのトラブルや異変があってもすぐに気がついて対処してもらえます。また、生活や医療的なケアも受けられるため末長く健康に過ごすことができるため、ご家族としても安心して過ごせるでしょう。
リハビリやレクリエーションなどが充実している
介護施設によりますが、リハビリやレクリエーションが充実しているところでは、日々の日常生活動作がリハビリになったり身体機能や認知機能の維持につながります。
医師や介護士、理学療法士など専門家のサポートを受けながら生活ができるため、最終的にはご自身でできることが一つも多いような生活を送ることができます。
施設利用のデメリット
入居までに時間がかかる
介護施設は、入居者数の上限が決まっています。そのため、入りたい施設が見つかってもすぐに入居できないことがあります。
ご本人やご家族の状態によっては即入居が可能なケースはありますが、かなり稀なことです。場合によっては数ヶ月待たなければならないこともありますので、担当ケアマネージャーさんと連携を常にとっておくことが必要です。
集団生活が苦手な方には辛い
施設によって、利用者さんが入居する部屋が相部屋であることがあります。個室を希望しても、なかなか実現しない可能性があることは理解しておきましょう。また、食事や入浴なども個室でできないことがほとんどですので、集団生活や他者とのコミュニケーションをとることが苦手な方にとっては慣れるまで大変かもしれません。
入居すると、長い期間をその施設で過ごすことになります。人間関係のストレスによって体調不良にならないよう、気をつけるようにしましょう。
退去させられることもある
一度入居すれば、あとはずっとその施設で過ごせるというわけではありません。他者に危険が及ぶ、施設の物品が壊される、問題行動ばかりが見られるという場合には退去させられてしまうこともあります。
介護施設での生活にかかる費用は?
施設や老人ホームでの生活には、主に次のような費用がかかります。これから紹介する費用は一般的なものであり、施設によってかかる金額や費用そのものには違いがあります。
入居したい施設等の費用にはどういったものが幾らかかるのか、事前に確認しておきましょう。
居住費
いわゆる「家賃」のようなものです。ご利用者によって負担する金額は、入居する施設や居室のタイプによって異なります。また、月々の費用は公的施設であれば法律で定められていますが、民間施設は運営会社によって金額が変わってきますので、注意しましょう。
食費
食費は、食材の費用や厨房の維持管理費(厨房がある場合)、外部に委託している場合には業務委託費などが含まれた金額です。公的施設の場合には一日分の請求をされることが多く、負担額には「自己負担限度額」が定められています。また、民間施設の場合は、事業所ごとに食費を設定しており、一日分で請求するところと、一食ごとで請求するところがあるなど、それぞれが異なります。
管理費(運営費)
民間運営の施設に入居すると、徴収されることが多くあります。それぞれの事業所によって「管理費」「運営費」の項目は分かれますが、光熱費や日常生活消耗品、レクリエーション用品、燃料費など多岐にわたります。内容等は、入居説明時に教えてもらえたり質問すると答えてもらえますので、聞いておくと良いでしょう。
日常生活費
施設によっては、石けんや歯ブラシといった日用品を一括で購入し、利用する人の希望に応じて提供している施設があります。また、お菓子や本などの嗜好品にも関わってくる項目です。なお、公的施設ではおむつ代が含まれますが、民間施設ではオムツ代は別負担となるケースがありますので、「入居してから別途請求されて驚いた…」ということがないようにしておきましょう。
医療費(薬代、入院等費用、往診など)
医師が常駐していない施設の場合、近隣の医療機関等に受診したり往診してもらうことになります。言うまでもないことですが、必要な医療費や薬代、入院費などは全額自己負担となることを覚えておきましょう。
施設介護サービス自己負担額
施設に入居して介護サービスを費用を受けるためにかかる費用は、介護保険が適用されるものについては一部負担となります。具体的には、合計所得金額が160万円以下(単身、年金収入のみの方は年収280万円以下)の方は費用全体の1割負担、合計所得金額がそれ以上の方は2割(もしくは3割)負担です。詳しいことについては、市区町村の担当者やケアマネージャーに確認するようにしましょう。
サービス加算
施設利用の費用は、基本的な「施設介護サービス費」とサービスの内容や設備、人員体制など施設ごとに加算されるものがあります。それぞれ法令で定められており、入居の際には施設管理者等から説明されます。しっかりと聞いておきましょう。
上乗せ介護費
法律によって指定されている人員配置を超えた人員を配置している場合、入居者に負担を求めることができます。事業所によって費用は異なるため、説明を聞いておきましょう。
この費用は「介護付き有料老人ホーム」をはじめとした施設が請求することを認められています。
介護保険対象外のサービス費用
介護保険の対象とならないサービス(買い物代行や理容美容など)は、全額実費負担となります。そういったサービスを利用する場合には、事前に同意を求められた上で全額を支払うことになります。
介護施設 入居までの流れ
本人と家族がしっかりと話し合った上で入居することが決まったら、施設選びが始まります。施設選びから入所までの流れを簡単に解説します。
どのような施設が良いのか、エリアや費用、公的か民間か…など、ご本人とご家族が条件をしっかり話し合って決めることが、何よりも重要です。「必須条件」と「希望条件」を固めておくと、施設選びが楽になりますよ。
希望条件に合う施設が見つかったら、資料請求を行いましょう。インターネットでも情報を得られますが、ちゃんと資料請求をすることが大切です。資料請求をすると、先方から連絡が来ることがあります。なお、見学を希望する場合には、事前に予約を入れておきましょう。
基本的には、実際に足を運んで施設を見学しましょう。入居後にもご家族は施設にいくことがあるため、アクセスのしやすさや設備そのもの、サービス内容の確認は当然のことですが、スタッフの対応や清掃は行き届いているか、施設内の匂いはどうか?など、ご本人が日々生活を送ることを想定したチェックを行うことをオススメします。
入居前には、体験入居を行います。施設によって日数は異なりますので、事前に入念に打ち合わせをしておくと良いでしょう。実際にサービスを受けてわかるおkと、スタッフの対応や食事の味、ゆっくり眠れるかどうかは実際に体験しなければわかりません。
ご本人と施設側がどちらも問題ないことが分かれば、入居に向けて契約を行います。入居時にかかる費用はあるのか、毎月いくらかかるのかなど、しっかりと確認するようにしましょう。なお、入居前に介護認定を受けたりケアマネージャーによって利用計画を立てる必要性も出てきます。
契約等が無事に完了したら、入居日を決定します。入居日に向けた準備を行いましょう。
介護施設への入居はダメなこと?罪悪感…?
これまでは、在宅介護で最期のときを自宅で過ごせるようにしてあげることが良いことであり、施設入所はよくないこと…という風潮がありました。
しかし、無理をして在宅介護を続けることで家族が体を壊したり「介護うつ」などになっては意味がありません。
ご家族も自分達の生活を送りつつ、ご本人が安全かつ健康に過ごせる方法として、施設入所は有効な手段です。
つながりを絶たないこと
大切なことは、入所してからも定期的に会いにきたり一緒に外出するなど「つながり続けること」です。入所した方の多くは、ご家族と離れることなどから孤独感を感じがちです。ですが、月に1度でも2度でも会いにきて話したり、少しドライブをするだけでも違います。
施設入所によって、ご本人が安全に過ごせるだけでなくご家族も安心して日々を過ごし、離れるからこそわかる存在を大切にすることで、幸せになれるのではないでしょうか。
ぜひ、入居を決めた際には前向きに考えることをオススメします。
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