高齢となり介護が必要になる場合、自宅が住みづらくなることも少なくありません。介護する側も、介護を受ける側も住みやすく過ごしやすい環境(バリアフリーの環境)にするために、「住宅改修」を行うことは必要不可欠です…が、これには多額の費用がかかります。
そこでおすすめなのが、住宅改修のコストを削減に「介護保険を適用させること」です。介護保険を利用し、バリアフリーの住宅改修費用を保険から捻出することが可能です。
介護保険はどのような場合に適用できるのかを知り、高齢者のための住宅改修に役立ててみませんか?
住宅改修とは
「住宅改修」は、簡単にいえばリフォームによって自宅設備の改善や新たな設備などの導入をすることです。しかし、バリアフリー化を目指すリフォームにはコストがかかります。介護保険の住宅改修費給付制度を活用することで、住宅改修費用を軽減することができるのです。
介護保険を利用して住宅改修を行う目的・メリット
住宅改修の目的は、日常生活動作(ADL)が自分で行えるようになることであり、自立意欲の向上です。同時に、家族や介護者の精神的、物的負担を軽減することにあります。
- 自宅介護の負担が軽減
- バリアフリーリフォームにかかる費用を削減
- 被介護者が自立した生活を送りやすくなり、意欲が向上する
特に、介護しやすい環境・バリアフリーの設備が整っていないと、介護者の負担は大きくなってしまいます。
介護者と被介護者が共倒れになってしまうことも少なくありません。自宅での介護がしやすくなることはもちろん、介護を受ける人自身が生活しやすくなる「住宅改修」は、「共倒れ」のリスクを軽減することもできると期待されています。
また、身の回りのことをできるだけ自分で行うことで、身体機能の向上や維持、認知機能の低下の防止などにも役立つとも言われており、いいことだらけです。
介護保険を適用させる利用対象者の条件
利用対象は、要支援や要介護の認定を受けている人であり、かつその人が住んでいる自宅を改修する場合です。
要支援は1~2、要介護は1~5のいずれかの認定を受けている必要があり、介護施設に入居している場合などでその住宅に住んでいない場合は、利用対象とはなりませんので、注意が必要です。
介護や支援を必要とする場合でも、介護保険による要介護の認定を受けていないと、適用対象になりません。認定を受けていない場合は、市区町村の役場などで要介護認定の申請をする必要があります。
ただし、施設からの退居日が決定していて、改修対象の住宅に住む予定がある場合は、介護保険が適用できることもあります。
介護や支援を必要とする人が住む家の改修なら、介護保険の適用を受けられるため、疑問点がある場合は市区町村役場の介護相談窓口や地域包括支援センターなどで相談してください。
介護保険の支給限度額について
介護保険による支給額は20万円を限度として、実際の改修工事にかかった費用の1割は自己負担とされています。
例えば、介護保険の適用対象となる住宅改修工事費用が20万円の場合は、その1割である2万円は自己負担、残りの18万円が介護保険から支給されるということです。
自己負担額は一律ではなく、2~3割が自己負担の方もいたりと、人によって異なります。ただし、いずれの場合も上限額は20万円とされています。
介護保険の住宅改修の種類
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 床や通路の材料の変更(滑りの防止・移動の円滑化等の変更)
- 扉の取替え(引き戸などに変更)
- 便器の取替え(洋式便器等への変更)
- その他、住宅改修に付帯して必要となる住宅改修
上記以外の住宅改修は、利用者の条件を満たしていても介護保険の適用対象とならないことがあるため、注意が必要です。
介護保険の住宅改修費給付制度の利用状況について
医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構の土屋瑠見子氏らの研究論文では、各調査・数字データより「認知機能や視機能に障害のある高齢者の住宅改修実施割合が相対的に低いことが明らかになった」と結論付けられています。例えば、温度の上限設定が可能な給湯システムへの改修によって認知機能障害のある要支援者の熱傷を防いだり、屋内の危険な箇所の素材変更や照明の設置により視覚障害者の受傷を防ぐことが可能といいます。
しかし、これらの改修コストは、現時点では給付対象にならないことから、「政策立案者は、給付制度の改善を検討する必要があるのではないか」とも述べられています。また、生活保護受給者の住宅改修割合が低い理由としては、「その88.1%が賃貸住宅に居住しているため、必要があっても改修できないケースがあると考えられる」との考察を加えています。
介護保険の住宅改修費給付制度の利用状況を調査した結果が報告された。
認知機能障害や視覚障害による要支援者は、他の理由による要支援者よりも、住宅改修を行う割合が有意に低いことなどが明らかになった。
介護保険による住宅改修の実情――視覚・認知機能障害へのサポートが不足
医療経済研究・社会保険福祉協会医療経済研究機構 より引用掲載させていただきます。
住宅改修の流れ
大まかな流れは、以下の通りです。
- 利用者がケアマネージャーなどに住宅改修の相談する
- 見積書を工事会社に依頼する
- 事前申請をする
- 工事を行う
- 支給申請をする
- 審査の上、支払いを受ける
公的な助成を受ける場合、利用対象や、手続きの流れを理解し把握することは重要です。
ケアマネージャーなどが、ただしく手続きをきちんと踏めるよう必要な助けをしてくれますが、自分自身でも把握し、より円滑に進められるようにするとよいのではないでしょうか。